東京を拠点に活動するツーピースロックバンド、帯化(たいか)の第三音源集『御池塘自治(おん ちとう じち)』がリリースされた。
サイケデリック、ポストパンク、インダストリアル、フォーク、タイポップス、日本民謡を横断する音像は、生活のなかでフィールドレコーディングされたあらゆる環境音に食い破られながらも、「ロックバンド」という様式のなかでその先の光明を捉える。
ハイハットをドラムセットから排除し、タムを中心に組み立てられたドラムパターンは、途中、シンバルの代わりに据えられた鉄板をぶん殴ることでインダストリアルサウンドに寄り道しながら、徐々に祭囃子に似てくる。
ツーピースという節制されたスタイルは、電動ドリルや鈴の音、あらゆるメタルパーカッション類が入り込む余地を残しながら、くぐもったギターと共に、コブシの効いた歌がそれらを「歌謡」として取りまとめる。
ユースカルチャーのなかでの特権的な位置を失ったその後で、「ロックバンド」が持ち得る可能性を拡張せんとする、二人組の「河原者」が編み上げた今作、『御池塘自治』に宿っているのは、西洋文化たる「ロックバンド」の誤った翻訳、ローカライズの運動であり、同時に極めてオーソドックスな文化的諸力である。